2017年02月19日

ビッグデータ・ベースボール

2013年に,大幅にデータを取り入れることで躍進したピッツバーグ・パイレーツの物語である.この時すでに「マネーボール」が出版されて10年になる.この時点でMLBは恐らく2017年のNPBよりもデータが充実しまた重視されていたと思われる.

それでもなお,いくつかのデータは現場では有効に使われていなかった.例えば今では当たり前のように知られる極端な守備シフトや,キャッチャーのフレーミングの技術についてである.実際に現場で野球をするあるいは采配を振る人間に,データが指し示す「正しさ」を納得させるのは難しい.それが直感や古典的セオリーに反しているならなおさらだ.
パイレーツがそのデータの採用に踏み切ったのは「追い詰められていた」というのが大きい.20年連続負け越しの弱小チームとはいえ,監督もGMもこのままでは恐らく契約が更新されないという立場に居た.現場の戦力も若手が多くまた一流と言える選手は多くなかった.それでもなお結果を出さなければならないという現実が,直感やセオリーといった人間らしさを乗り越えてデータの示す冷徹な正しさを受け入れさせたのだ.
まず監督に,続いてコーチに.データそのものあるいはデータ分析官とかいうオタクが,付き合ってみればそれほど敵対的なわけでも意味不明なわけでもなく,何より自分たちに良い結果をもたらすかもしれないと思わせる.その手順を,感情的でも感傷的でもなく淡々とした筆致で示していく.理屈としての裏付けもある.150km/hで飛んでくるボールに140km/hでバットヘッドを振る人間は視覚IQが高い.文字の羅列を受け入れなくとも視覚的チャートなら瞬時に理解し記憶できる.
「なろう」などに溢れる異世界転生+俺TSUEEと同じ構図でありながら,持っている説得力は断然違う.人間と人間の和解の話としてとても面白かった.
posted by terarorz at 16:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 本とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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