2017年02月05日

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上・下

第二次大戦で枢軸国が勝っていたら,というのは佐藤大輔を持ち出すまでもなくディックの「高い城の男」のように古典的なテーマである.これを現代風に焼き直すとどうなるのか.

それ自体は素晴らしいと思うのだが,恵まれた上巻からクソみたいな下巻になってしまったのは,編集ならびに著者の責任だぞ.

「主人公」の定義には色々あるだろうが,例えば「物語の中で最も成長した者」という定義はあり得るだろうと思う.その線で行くと今作では主人公がベンではなく昭子であるのは間違いないのではないか.著者も後書きでそう言っている.だから,昭子の肉体そして精神構造に大きな変化が生じる上巻終盤は傑作と言って良い.上巻のラストは過去編で物語の元凶となる忌々しい出来事を適切に描写し上巻のラストとして望みうる最高の「ヒキ」になっている.

それが,どうして,下巻で,ああなってしまう,のか.
ベンが助けてくれた.ベンが何とかした.ベンが頑張った.
主人公は,ベンではなく昭子だと言ったな.あれは嘘だったのか?

下巻のラストシーンはとても良いよ.ベンの過去が,人物を形成した最も重要な出来事が感傷的に明らかにされる.物語的必然としてこれがラストシーンになるのは,ベンが主人公で無かったとしても,わかるよ.しかし下巻の昭子の傍観ぶりと変化の無さと言ったらどうか.

せっかくの傑作が台無しになっていくので読んでいてとても辛かった.
posted by terarorz at 16:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 本とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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